闇精霊の歌う夢

 明るい昼は光の精霊達の遊び場。
 暗き夜は闇の精霊達の祭り場。

 風の精霊は大陸を駆けよ。炎の精霊は想いを焦がせ。
 大地の精霊は力と強さを示し。水の精霊は穏やかな心を作れ。

 そう、神様はお決めになった。

 けれども、年に一度だけその掟は破られる。

 始まりは歌。
 大人びた印象の、黒い衣装を身に纏う、歌姫達。

 全ては一夜の夢幻か。
 交わることのない、精霊達。されど、この日ばかりは全てが交差する。
 世界に生きる、全ての精霊が役目を忘れる唯一の日。

『それが、世界に生きる精霊達との約束だから……な』

 神にとっては、気の休まらぬ日ではある。
 しかし、戦乱の世ではない。そんなもの、とうの昔に集結している。
 けれども、万が一……あの扉が開いてしまえば、再び戦乱の世は帰ってくるだろう。
 夢も、希望も何もない、ぶつかり合うエネルギーだけとなる世界。
 生まれては戦い、消えゆく精霊達。
 あれは地獄だ。そう神は語る。
 何も知らぬ精霊は、歌に込められた意味を考える。
 そして最後に、この世界に生まれて良かったと思うのだ。

覚めぬ夢なら、いつまでも。終わらぬ幸せを、我らの元へ

 歌の終わりは宴の始め。
 舞い踊るのは、色とりどりの精霊達。
 今日のためにと用意された、いつもと違う衣装を纏う。
 風精霊は木の葉と共に。
 火精霊は恋を歌い。
 地精霊は技を見せ。
 水精霊は静かな調べ。
 負けず劣らずの強者達が、己の技力を尽くす舞台。

 今宵も宴は開かれる。
 精霊祭と呼ばれる、十の月の終わりに。









 + + +









 そう、誰かが歌っていた。
 再びの戦乱の中、助かったのは闇の精霊。
 真昼の決戦には関与できず、そのまま全てが消えてしまった。
 彼女たちは、歌うことしかできなかった。
 悲しき歴史を紡ぐよりも、楽しき想い出を今ここにと。

 闇精霊の歌は、終わる事のない悲しき調べ。
 いつか再び、穏やかな日へと戻ることを夢みながら……


〜end〜


おまけ的、コメント。
ハロウィン関係ないじゃんと思った方へ。
一応祭りの舞台がハロウィンの日……というのだけじゃ駄目でしょうかね?(苦笑)
確か、ハロウィンの別名みたいので精霊祭とあった記憶があるので。
お化けも、仮装も何もでてきませんが、精霊達のお祭りです。
ホントは、オリキャラ達の仮装パーティも脳内にはあったんですが、それこそ一夜の夢幻でした。
色々妄想はしたんだけどな。

精霊と神様だけの人間はいない世界のお話。
結局、再び戦乱に戻り残ったのは闇精霊達だけ。
彼女たちは何も知らず、歌うことしかできない……のような感じです。

ではでは。 Trick or Treat♪

by カザハナミズナ 2004/10/31

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