第0話 『天證(テンショウ)の伝説』


 時にして昔。

 まだ魔法使いが万能ではなかった頃……

 とある場所に大陸が三つあった。


 大陸の名はそれぞれ空泝(クウス)・海流(カイル)・陸杜(ロクト)と呼ばれている。


 東に位置する空泝は左を向く横から見た鳥の形をした島。

 人が多く住み、三大陸のうち一番近代化した島。


 西に位置する海流は右を向く横から見たイルカの形をした島。

 精霊や半獣族、人間とは少し異なる者達の住む、自然の多き島。


 南に位置する陸杜は北に腹、東に頭を向ける長耳の獣の形をした島。

 唯一の砂漠や農村の多き、穏やかな島。


 そして、その三大陸に残るのが、天の大陸 天證(テンショウ)にまつわる伝説。


 それは遙か昔、三大陸の中央 上空に位置する丸い島。

 神や上級精霊の住まう国だったという。


 ところが、ある日まばゆい光と共に天證は姿を消した。

 そして、大陸のそれぞれに星が落ちたという。


 空泝には空の化身 風と闇を司る鳥に似た姿をしたクスト。


 海流には海の化身 水と光を司るイルカに似た姿をしたカシナ。


 陸杜には大地の化身 地と炎を司る狼に似た姿をしたログノ。


 それぞれが後に、その大陸の守り神と語られていった。

 しかし、神が本来の姿を人に姿を見せることはなかった。


 天證の伝説は今も人々の中に生き続け、いつか神が姿を現すと信じられているのである。


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