大会の次の日、ティナはまた夢を見ていた 今度は悲しい夢だ 大好きな人たちと引き離されて、ずっと泣いていた そして… ガバッという音と共にティナは起きあがった。そこはいつもの自分の部屋だ。 だが、今日は珍しく窓を打ち付けるほどの雨が降っていた。 何もかもを打ち消すような雨の中、ティナの中に1つの思いが芽生えていた。 (この雨がやんだら、ばあちゃんの所に行こう。そしたら心が決まるかもしれない) 雨はいっこうに止む気配が無い。まるで、ティナの決心を止めるかのように降り続ける。 午後にはいっそう激しくまるで水龍が暴れるかのように、雷鳴のとどろく天気となった。 「なんで……どうしてこういう日に限って雨なの!!」 ティナはさすがに我慢ができなくなった。 「もういい、誰かの邪魔かもしれないし、行く! 兄さま、ばあちゃんのとこに行って来る。止めても無駄だからね!!」 兄は驚いて持っていたカップを床に落とした。 「ってティナ、この雷雨の中行くのか? おばばが何処にいるかわからないのに!」 兄が慌てるのに、目もくれずティナは用意をしている。 「どうしても……どうしても聞いて欲しいことがあるの! 今日じゃなきゃだめなの。だから……だから、行かせて!!」 初めは何か言おうとしていた兄だが、半分諦めた顔で言った。 「どうせオレが止めても行くんだろ? ちょっと待ってろ」 兄は引き出しの中から1つの袋を取りだした。 「いいかティナ。お前の守護は火龍だって前に言ったな?」 「うん」 「だから、雨の日は危険なことが起きるかもしれないんだ。だから、この守り水晶を持っていってくれ。こいつが守ってくれるはずだから」 ティナは守り水晶の入った袋を受け取ると、首に下げた。 「ありがとう、兄さま。いってきま〜す!」 ティナは玄関を飛び出すと、全速力で走っていった。 ティナが出かけたとき、上の階から父が下りてきた。 「ティナは出かけたのか?」 「あ、父さん。どうしよう、もしかしたら……」 兄は少しふるえている。 「時が来たのかもしれんな。あの日から9年、もういいんじゃないか?」 兄は何か言いかけたが、すぐに飲み込んだ。 「それに……じきにあの子も気づくだろ。お前もわかってるだろ?」 「……うん」 兄は開け放たれた玄関の向こうを、悲しそうな目で見つめていた。 + + + ティナは必死に走っていた。打ち付ける雨は矢のように激しく、氷のように冷たかった。 いつもおばばのいる街角から少し離れた所に、彼女は住んでいる。 そこにつくと、ティナは声もかけずにドアの中に転がり込んだ。 おばばは転がり込んできたティナを見ると少し驚いていた。 「なっ……何で今頃来たんだい? いつでも良かろうに。とにかく、ここに座って体を拭きなさい。何か暖かい物を作るから」 そう言うとおばばは、テキパキとスープを作ってくれた。 ティナはタオルを上からかぶせられ、何がなんだかわからないうちに椅子に座った。 「ほら、暖まるから飲みなさい」 おばばはティナの目の前にスープを置くと、自分も椅子に座った。 「で? 何の用かい?」 「あのね……私の今と未来を占って欲しいの」 「それだけかい?」 ティナはスープを飲みながら首を横に振った。 「そうか……とりあえず占うとしよう」 おばばは水晶を出すと占ってくれた。 不思議な光を放つ水晶はとても幻想的である。 「いいかい? 今、お前は2つの道の1つを選ばなければならない。1つは何もしない、もう1つは動き出すこと……どちらにしろ変化はあるぞ」 「やっぱり。ばあちゃんどうしたらいい? それが聞きたいの!」 ティナは思いっきり机をたたいて立ち上がった。 5秒後、おばばが占っている途中だったことを思い出して、慌てて座った。 「ティナ、それはお前が決めなさい。人が口出しできる問題ではないと思うぞぇ」 ティナは少し考え込んでしまった。見かねておばばは口を開いた。 「それに……ティナ。もう決まっているのでは?」 ティナはその言葉で決心がついた。 「わかったよ。ばあちゃん、私、旅に出たい。それで、もっと強くなる!」 おばばはティナの言葉を聞くと、一瞬だけ笑って言った。 「そうかい。ティナ今日はもうお帰り。雨もやんだようだ。明日、私がお前の家に行って、話してみよう」 「うん! ありがとう、ばあちゃん」 ティナは着てきたレインコートを手に掛けて、走って帰っていった。 back top next |
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