第11話 『少年の真実』

 少年の攻撃はミケルの目の前で何故か消えた。

 よく目を凝らしてみると、青糸矢が赤い飾りを貫いたところだった。

 少年の魔力に影響を与えていた物が消えたから、攻撃も消えたのであろう。

「うあぁぁぁぁっ!」

 地面に落ちてくるのはあの少年……のハズだった。

 しかし、落ちてきたのは年がミケルと同じくらいの青年。

 持っていた杖からは翼の飾りが消えている。

 これにはさすがのミケルも動揺した。

「どういうことだ? まぁピアスは消えたみてぇだし、とりあえずはいっか」

 あたりを見回すと村の辺りから、霧が晴れていくのが見えた。

「一体どういうからくりなんだか。手がこんでんなぁ。黒幕はどこのどいつなんだか……相当な暇人だな」

 少年の言動からして、無差別ではなくミケルとティナを狙ったようである。

 何か裏にあるような気がして、ミケルは不機嫌そうに顔をしかめた。

 色々考えていると、青年がぴくりと動いた。

「う……んっ」

「お、起きたか?」

「えっと……あの、ここは?」

 何がどうなっているのやら、といった顔をされてはミケルも答えようがなかった。

 どうやらこの青年。今までのことに関して、記憶がないようである。

 それに、何故か言葉遣いも丁寧になっている。

 ひとまず、安心させる為に名乗り出ることにした。

「オレはミケル。お前は?」

「僕は、アレスです」

「アレス……か。とにかく、詳しい話は村で聞かせてもらうぜ。移動魔法できるよな?」

 コクン とアレスが頷いたのを確認すると、ミケルは得意な水系の移動魔法を唱えた。

 一方アレスは風系の移動魔法を唱えている。どうやら、風系の魔法が得意らしかった。


 + + +


 村に着くと、ミケルは村長にアレスを紹介した。勿論、ただの魔法使いとだけ。

(話聞くのに、ティナも必要だな)

 そう思いミケルは、アレスを連れティナの部屋に向かう。

「おいティナ、起きて……るわけねぇか。起きろっ! 土網消したぞ!」

「ん……あと10分だけぇ……ふにぃ」

 ティナは曖昧な返事をすると、寝返りをうつ。

 人が苦労して戦ってきたというのに、どうしてこういう態度をとるのだろうか。

 ミケルは断りも入れず、魔法を使った。

「地水火風全てを司り、その力を持つ光の精霊よ、今我が力となりかの者を眠りから覚ませ、輝光閃(きこうせん)!」

 ティナの目の前だけに、光が走る。

 後ろから様子を見ていたアレスは、止めに入ろうかとも思ったが、これが日常なのだろうと無理矢理自分に言い聞かせた。

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

 水を掛けて起こされた時よりも大げさな反応なのは当然だろう。

 耳を押さえていたミケルは、叫び声がやんだのだろうと判断すると、ティナに指を向けた。

「う・る・せ・え!!」

「だって……あれ?」

「客だ。さっさと起きやがれ!」

「お客?」

 混乱することが多すぎてついていけないといえばそうだ。

 だが、ミケルの後ろにいるアレスに気づくと、ティナはやっと目が覚めたようだった。

 結んでなかった髪を結うと、ティナは椅子に座る。

「それで?」

 ティナは座ると早速尋ねる。

 見知らぬ青年は正面でにこやかに座っていた。

「初めまして。……アレスです」

 アレスは一礼してさらに微笑んだ。

「どういうこと? ていうか、誰?」

「つまりな。あのガキ……山の魔法使いの正体なんだよ、コイツが」

「……」

(うそ、全然違うじゃん。大体丁寧語使ってる?!)

 ティナは言葉にできず、心の中で繰り返した。

 声に出したいのも山々なのだが、それをミケルが許してくれない。

「ま、詳しいことは、これから聞くけどな」

 ミケルが振り向くと、アレスはもう一度微笑み椅子に座る。

「勿論、そのつもりですよ。知っている限り、ですけど」

 まずティナとミケルが簡単に自己紹介をした。

 アレスは、じゃあ僕の番ですね、と言うと自分のことを語り始めた。


 * * *


 夢の中で、ティナはまたあの光景を見てしまっていた

"なんだろう やっぱり私、何か忘れてるのかなぁ"

"ティナ〜!"

 火龍の声がすると、ぼんやりと映っていた光景は消えた

"見ては駄目と、あれほど"

"ゴメンね、火龍"

 ティナは、シュンとなる あまりに素直な反応に、火龍は自分も少し強く言いすぎてしまったかしら……と思ってしまう

"えっと……そうだ、今日風の気配がしたけど、何かあったの?"

 話題を変えてくれた火龍に、ティナは内心感謝した

"風の気配……ああ、アレスね!"

 ティナは新たな友達を思い出し、声のトーンを上げる よほど楽しい話をしたのだろう

"アレス?"

 火龍は少し戸惑う

"んと、霧の魔法を掛けてた張本人 私の予想通り、ピアスを壊したら元に戻ったの!"

 火龍は声には出さず、相づちだけを打つ

"で、そのアレスの守護が、風蛇なの"

"そう……それで"

 火龍はティナの話が止むまで、黙って相づちを打ちながら聞いていた



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