翌朝。 ミケルはこの村に来て初めて朝日を見た。 やはり朝はこの光が無くてはスッキリしない。 「……やっぱベッドは寝心地が良いよな」 理由は、光だけでもなさそうである。 大きく伸びをしてから、横の椅子で寝ているアレスに声をかける。 昨夜、やはり突然の客に、寝室が増やせるはずもなく、結局アレスが椅子で寝ることで落ち着いたのである。 「おい、アレス。朝だぞ」 「あ、おはようございます」 アレスはやはり微笑む。ミケルは、そんな笑顔よりもこの言葉遣いに違和感を持った。 「ってか、アレスの方が年上……だったよな」 「はい、そうですけど?」 アレスは椅子から立ち上がり、掛けていた灰色のマントを羽織る。 そして、それが何か? と聞くようにミケルの方を向いた。 「何で、丁寧語使うんだ?」 「なんで……といわれましても」 アレスは少し黙り込んだ。だが、思い当たる節はなさそうだ。 「おそらく、癖ですね」 「癖ねぇ……大変だな」 (ああ、あいつも……クラフも丁寧語を使ってたか) ふと、昔の顔なじみが被りミケルの表情は穏やかになった。 そうでもないですよ、と笑うアレスを横目に、ミケルは同じく自分の茶色いマントを羽織るとドアノブに手を掛ける。 「オレ、ティナ起こしてくっから」 「わかりました」 ミケルがティナの部屋に入ると、案の定ティナはソファーから落ち、床で寝ていた。 「んむ〜……」 勿論、寝顔は羨ましいほど幸せそうで……そりゃぁもう、無理矢理にでも起こしたくなるもので…… 「今日は、水浸しで起こして欲しいのかよ、おいっ!」 揺さぶっても、いつも通り起きるはずもなく…… 「ばいば〜い、火龍〜」 満面の笑みを浮かべ手を振っている。 そして、こちら―ミケル―もいつも通り我慢が効かず…… 「霧……はもうねぇか。大気中に住みし水精よ、我が力となり、かの者を包め水晶球(すいしょうきゅう)!」 やはり、魔法を使ってしまった。 水の泡ではなく、水の球がティナを包み込む…いや、飲み込んだ。 水泡球とは違い中も水なので、目を覚ましたティナはいきなり大量の水を飲んだ。 「ガボガボガボガボガボッ」 「……起きたか?」 冷たく笑うミケルに向けて、ティナは一生懸命首を縦に振った。 「なら」 ミケルはすぐに解呪文を唱える。すると、ティナは水晶球から解放された。 「あ゛〜死ぬかと思った」 水を吐き、せき込むティナにミケルは問う。 「乾かすか?」 「当たり前でしょ!」 ティナは今にも向かっていきそうな勢いだった。 「起こすんだったら、真面目に起こしてよぅ」 ミケルの魔法で服と髪とを乾かしながら、ティナは文句をたれていた。 「オレ様は、十分真面目だ」 よっぽどたちが悪いようというティナの反論は、ドアのノックにかき消された。 ミケルがドアを開けてみれば、アレスがクスクスと笑っていた。 「朝から賑やかですね。えっと、朝食ができたそうですよ」 「わかった。ティナ、先に行ってるぞ!」 「あ〜まって……」 パタム ドアがしまった。ティナは、慌てて後を追う。 朝食は昨日と同じように、シアの母親お手製のパンがあった。 そして、霧が晴れたことに気づいてか村長もシアも、前より明るい顔をしていた。 「そういえば、みなさん。今日出発するんですか?」 食後のお茶を運びながら、シアの母親が尋ねてきた。 「そうだな、霧も晴れたし、そろそろ行くか」 「南のシグス、だね」 「えっ?! 二人とも、シグスに向かってたんですか?」 ティナはアレスが驚いたのを見て、ようやく思い出した。 「そっか。アレスはシグスの出身だっけ」 「はい。あのっ僕も一緒に行っていいですか?」 ティナはミケルを見ながら言う。 「私は…いい、と思うけど?」 「別にかまわねぇぞ。一人増えたって、かわんねぇしな。ティナがいる時点で」 それ、どういう意味よぅ、と聞き返すティナを無視して続ける。 「だが、いざって時は、自分の身は自分で守れよ。オレ様は、他の奴の面倒を見る気はねぇからな」 (ミケルなら他の人の面倒を見そうですけど…) などと、アレスに思われているとは、さすがのミケルも見当がつかないだろう。 「わかりました。これから、宜しくお願いします。ティナ、ミケル」 「ああ」 「よろしく〜」 かくして、ティナとミケルは新しい仲間―アレス―と共に村を出た。 そして、当初の目的地―シグス―に向かって、歩き出した。 二つの運命の星は、不思議な流れ星に出会った 行く手を阻まれたかと思ったが、その星は軌道を変えた そして、二つの運命の星と同じ流れとなる 運命の星はこれから、起こることをまだ知らぬまま流れ続ける 第3章 終 back top next |
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