その11

――――水の原っぱって書いて、水原だよ


 水菜に自分の名字を教わってから、俺はそのことしか考えていなかった。
 それを元に、どうにか下の名前と記憶をたぐり寄せる必要があったからだ。
 ところが、俺にはそんな時間も与えられないらしい。
 いや、むしろ考えている俺はただの暇人に見えるらしい。



 それは、俺が縁側でのんびりしていた午後のこと。
 ま、正確に言えば、午後と言えるのか怪しいが、昼飯を食べた後だから確かだ。
 横では障子にもたれかかって火月が昼寝をしていた。
 んで、俺はカードを広げて占いでもしようかな、などと考えていたところだった。
「少年〜。何してんの?」
「何って……暇だから、何か遊ぼうかと」
「じゃぁ、なんかやってよ〜」
 手元にカードがあったから興味をもったのか、水菜は俺にのしかかってきた。
 ……重い。
「あのなぁ」
 そんなやりとりをしていた時。
 やっかいごとと書いてトラブルは舞い込んだわけだ。
「……ぉ、いいとこにいるじゃんか」
 縁側から続く、廊下の向こう側から岐光が歩いてきた。
 この家に長男や長女がいることは珍しい。
 岐光がいる、ということは……仕事かなにかなんだろうか?
「暇か?」
 にやりと笑った岐光の顔は、明らかに何か悪い予感がした。
 暇じゃない、と言ってもよかったんだが、あとが怖いので誤魔化すことに決めた。
「そういえば、そうだし。そういわなけれ」
「じゃ、つきあえ」
 俺が言い終わる前に岐光は右手でフードを掴み引っ張った。
 左手は廊下の向こうを指している。


 …………


「はいぃぃ?!」
「行くぞ、すぐ行くぞ、今行くぞ」
 気づくと俺はフードを引っ張られ、引きずられかけているところだった。
「ちょ、ちょちょ……なんだよ、一体」
 慌ててケースにカードをしまうと前ポケットに入れ、フードを引っ張る岐光の手を掴んだ。
 それに答えてか、岐光は俺の方を振り返った。
「退治。手伝え」
 それはもう、卯海には劣るが、いい笑顔だった。
 岐光は俺のフードをいったん離すと、さらに体の向きを変える。
「つーことで……げ〜つ〜起きろ!」
 豪快にも、岐光は左手を障子にかけ、左足で寝ている火月の頭を蹴った。
 おいおいおい。いくらなんでも、寝ている弟を足蹴ってのはどうかと。
「む〜……何の用だ? オイラはまだ寝たりな」
「いーから起きろ。後で海の仕置きを食らいたくなければな」
「む、それは勘弁……ふわぁ」
 大きなあくびを一つと、それに負けぬ大きな伸びをすると、火月は立ち上がった。
 というか、岐光の誘い方が間違っている気がする。
 卯海のお仕置きってなんだろう。嫌な感じはかなりするけど。
「で、来るよな? お前も」
 今更聞くなよ。どうせ決まってるようなもんだろ。
 まぁ、別に暇だからいっか。
「はいはい。行きゃいいんだろ?」
「あ、少年が行くなら、私も行く〜」
 面倒くさげに立ち上がった俺の右腕に、水菜が飛びついた。
 右腕に全体重のせられると、重いんですけど。


 て訳で、俺は急きょ岐光の退治の仕事を、手伝う羽目になった。


 そういえば、岐光が真面目なところ初めて見た気がする。
 いや、仕事を真面目にこなすのはいいことだろうし、普段もそうなんだろうけど。
 どうも俺が見るのはいつも、卯海に負けているとこだったから。
 一応、強いよな? 長男だし。口で負けてるだけ……だろうしな。
 でも、火月ってどうやって戦うんだ?
 長女 風樹は魔法陣使い。長男 岐光は符術使い。次男 卯海は本を使って魔法みたいな物。
 次女 林華は言霊と呪術使い。三女 水菜は錫杖を召喚して、魔法に近い物を使う。いや、魔法か?
 四男 菜月はまだ見習いだから固定してないって言ってたな。
 となるとなんだ?
 みんな違う系統のモノを使うようだし……でも、火月は手ぶらだし、何より一本下駄なんだよなぁ。
 まぁ、一本下駄はこの際おいとくとしても、どうにも予想がつかない。
「もうすぐ見えてくっぞ。準備しとけよ、お前ら」
 あれこれ考えているうちに、場所へは近づいたようだった。

 にしても、今回の仕事って一体どういうもんなんだ?
 岐光の言い分は"行きゃ分かるぜ。人数いれば、どうにかなる仕事だしよ"だった。
 とりあえず、面倒ごとには変わりない気がするんだけど。
「あ、そうそう。殺さない程度ならいくらでもぶちのめしていいってよ」
「は?」
「相手が気絶する分には大いに結構。重傷でもかまわねぇ。とりあえず、生きていればってことだ」
 分かりやすいような、一番難しいような。
「光兄貴、好きにしていいって事か?」
「ああ、お前得意分野だろ?」
「もちのろん。オイラだけ、別場所に陣地とるゾ、それでいいか?」
「そりゃ、かまわねぇって。な、水」
「うん」
 なんか、俺の入れない世界に思える。いや、入れねぇんだけど。
 にしても、死なない程度にぶちのめすことが得意分野。
 普段ぐーすか寝てばっかりの奴がねぇ?
 ま、なんでもいいか。







 + + +







 移動魔法を使いつつ、たどり着いたのは何もない荒野――ではなく、砂煙舞いおこる、今まさに乱闘中といった感じの場所だった。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁ!!」
「だから、言ったろ? 退治だって。最下級の鬼どもがよーわからん暴動を起こしたらしい。で、それを鎮めろってさ」
 最初の説明と違う気がするんですけど。
 大体鬼退治とは言ってねぇし、話飛躍しすぎだって。
「ま、こういうのはオレの専門と言うよりは月なんだよ。だから、数も多いことだし、お前も呼んだわけ。じゃ、行って来い!」
 そう言って岐光は俺の背をドンッと押した。
「て、っととと」
 で、バランスを持ち直して顔を上げたところにあったのは、赤鬼青鬼その他大勢の鬼の顔。
 皆さん、凄く怒っていらっしゃる?
 嫌な汗が、俺の背中を伝った。
「危ないよ、少年! 雹花降(ひょうかこう)!」
 鬼の腕が俺に襲いかかろうとした時、水菜の声が頭上から聞こえた。
 錫杖の鈴が軽やかになり、氷の花のつぼみがバラバラと降り注ぐ。
 声で上を向いた数匹の鬼は、目に入ったらしく奇声をあげていた。
 その間に水菜は俺の側に着地し、真剣なまなざしで俺を見る。
「油断しちゃ、だめだよ。こいつら、容赦ないし。まったく、これで何回目なんだか……」
 要するに、よくあるんだな、鬼どもの反乱は。
 反乱=文句がある、なんだから、解決すりゃいいものを。
「とりあえず、ぶちのめしゃいいんだよな?」
 俺は再確認するかのように、水菜に聞いた。
「うん。方法はなんであれ。援護するからさ、私が」
「じゃ、頼む。行くぞ、水菜!」
「うん」
 こうなれば、やけっぱち。カードを箱からとりだすと、俺も戦闘態勢に入った。


 俺の掲げたのは大アルカナ11番目のカード 裁判の女神。
 左手に天秤、右手に剣を持った、左向きの女性の描かれたカードだ。
「魔力を秘めし、我がカード。今、裁判の女神の力をもって、鬼達に正当な裁きを! 聖剣裁(せいけんさい)!!」
 白く光る剣がそれぞれの鬼に突き刺さっていった。
 この技のいいとこは、相手に死なない程度のダメージを与えられること。
 ゲームのようにどんなに使っても、かならずHPは1残る都合のいい技。
 それに、死神のカードみたく、体力消費をすることもない。
 消す必要のない奴とかに使う用で、属性的には光。
 闇属性っぽい鬼にはもってこいってわけ。
 水菜が押さえている間に、俺が攻撃を放つというパターンを先程から繰り返していた。
 ようやく人垣ならぬ鬼垣の山も少しずつ崩れていき、周りがよく見えるようになってきた。
 そうなると、俺達以外の状況もようやくつかめた。
 岐光の方は得意の符術を屈指して鬼の山を作っていた。まぁ、当然か。
 んで、火月の方は……?


 ……あれ?


 どうにもこうにも、火月の姿が見えなかった。
 いや、正確に言うと次々と気絶して飛ばされる鬼達は見えたが、その中心は見えなかった。
「よそ見しないでよ〜少年! 風葉爪撃(ふうはそうげき)!」
「あ、わりぃ。魔力を秘めし、我がカード。今、崩れ落ちる塔の聖なる雷(いかずち)を降らせよ! 雷神光来(らいじんこうらい)!」
 俺が呼んだのは、前に使った塔のカード。
 ただし今回は大きいのを一発ではなく、一匹に一発の割合だ。つまりは、質より量。
 カードのコントロールを大分思いだしたから、こんな小技も使えるわけだ。
 ん? 水菜が怒って俺の服を引いた気がした。別にいいじゃんか。前と違って調節してるし。
「しょ〜ねん〜!」
「いいだろ、そんなでかいのじゃないんだし」
「そう言う問題じゃない!」
 まぁ、怒った水菜がいるのはともかく、周りの壁が全部なくなった。…さてと、これで周りの様子が見れるな。
「さてと……水菜、火月って何やってんだ?」
「ほえ? 何って、見えないかい?」
 見えないかい? だとぉ。どんどん投げ出される鬼どもなら見えるぜ。あと土煙。
 仕方ないなぁ、と言って水菜は俺の腕を引いた。
「よく見えるとこに行くよ。あとの残り、光にいと月にいに任せられるし」
 よく見えるとこって……?
「大地より吹き上がる風、我らを空へ運べ!」
 シャンッ と、水菜の錫杖が振り下ろされた。そしてつむじ風が起こり、俺と水菜の足が浮いた。
 わ、わわわっ?!
 急なことで、なおかつ足場がない不安から、俺はバランスを崩しそうになった。
「大丈夫だって! スケートしてるって思えば」
 無理、絶対無理!
 スケートは分かるけどあれは地面がちゃんとあって、今回は三次元の空間に放り出されてるんだって。
 ある程度上昇すると、少し慣れてはきた。
 下を見れば岐光の戦っている様子が見えた。
 かなり、余裕綽々といった感じで、楽しんでいるような感じだ。
 やっぱり、長男は強かった。うん。納得。
「ほら少年、真上だと見えるよ」
「ん?」
 真下に土煙の間から、火月が見えた。


 …………


 俺は一瞬自分の目を疑った。
 火月は魔法でもなく術でもなく、俊敏に動き回って、己の力のみで敵を倒していたから。
 なんで、あんな動きができるんだろうか? 片手でバランスをとって両足で払いのけるわ、素早い動きで後ろに回り手刀で倒すわ。
 運動神経抜群もいいところだった。
 ……なんで、あの動きを一本下駄でできるんですか? しかも、あれかなり高さあったぞ。
 鉄下駄を履いていても驚くけど、これもなんだかなぁ。
「なぁ、水菜。なんであんな動きできるくせに、火月は普段寝てるんだ?」
「さぁ〜? あんまり、よく知らないんだよね」
「ふ〜ん」







 + + +







 しばらくして全部の鬼が気絶すると、岐光が俺たちを一ヶ所に集めた。
「岐光、こいつらどうするんだ?」
「ん? ああ、このまま放っておけってさ。どっかに送れっていう依頼じゃねぇし」
 おもしろかったろ? と、岐光は俺に笑いかけた。
 本心をいえば、あんまりおもしろいとも思えなかったが、ハッキリとはいえなかった。
 帰るために歩き出した俺を、火月がいきなり引っ張った。
「へ?!」
 すぐさま俺のいた場所に火月が移動すると、次の瞬間、横から腕が伸びてきた。
 それを火月はギリギリでよけ、のばしてきた人物に蹴りを入れる。
 完全に避けきれなかったからか、火月の首にしていた雫石を止める黒紐がきれた。
「わ、わりぃ」
「気を付けねぇと、まだ反射的に起きてくるのがいるゾ」
「ああ」
 俺は落ちた雫石を拾うと、火月に渡した。
「お、サンキュ。よかった……なくなってなくて」
 火月は雫石を受け取ると、安堵の表情になった。
 それほど大事なモノなんだろうか? まさか、誰かの形見とか?
「む? 気になるか、コイツが」
 火月が苦笑いを浮かべていた。どうやら俺はいつの間にかじっと見ていたらしい。
「ま、まぁな」
「んじゃ、家に戻ったら教えてあげるゾ」
「あ、私も聞く〜」
 前にいたはずの水菜が、突如下から顔を出してきた。
 び、びびった。
「おんやぁ? 水には話してなかったかぁ?」
「うん。だって、私が月にいを最初に見た時は、もうそれしてたでしょう?」
「そういえば、そうかもなぁ。じゃ、さっさと帰るゾ」
 そう言って火月は、符で結界をはる岐光の所に行ってしまった。
「って、置いてくなよ!」
 水菜の移動魔法だけは嫌な俺は、慌てて岐光の結界に滑り込んだ。







 + + +







「……で、なんで月にいそれを持ってるわけ?」
 家に着いたとたん――正確に言えば、最初にいた縁側に腰を下ろしたとたん水菜は火月によっていった。
 が、その首を掴み持ち上げる者が1人。
 すげぇ、持ち方。あれじゃ、小動物を持ち上げるのと一緒じゃ。
 ……猫だし、いっか。
「水、少し待ってろ、海にオレが報告してからだ、その話は」
「え〜なんでぇ」
「オレも聞きたいから。簡単になら知ってっけど、詳しくは知らねぇからな」
「む、光兄貴早く戻ってこないと、オイラまた眠気が」
「ああ、わかってるって」
 じたばた藻掻く水菜から手を離すと岐光は手をヒラヒラ振って廊下の奥に消えた。



 + + +



 それから10分後、無理矢理押しつけられたかどうかは知らないが、冷たいお茶をのせたお盆を片手に持った岐光が戻ってきた。
 報告のあと、卯海が気を回してくれたんだと思う。
「光兄貴は、どこまで知ってるんだ?」
「ん〜そうだな、帰ってこなかったあの日の後から、お前がぐーすか寝るようになった理由だけだな。それまでのいきさつは知らねぇし、何より林が誰にも喋らなかったからな」
 林華しか詳しくは知らない、てことなのか?
 さすがは情報通、と思ったが……歳が近いってのもあるのかもしれない。
 水菜もこの会話には首を傾げている。
「じゃぁ、最初から話す必要があるのか。む〜めんどいゾ」
「そういわないで、話してよぉ月にい!」
「わかった。じゃ、静かに聞いてるんだゾ」
 火月が話しだしたのは、魔界で大体150年前の話。
 水菜はまだ生まれていない頃の話だった。









 + + +









 50歳……今の菜月と同い年だった頃の火月は1人で外に遊びに行ったそうだ。
 当時は、移動魔法も使えなかったが、いざというとき村に一瞬で戻ってこれる護符を持っていたらしい。
 で、その日火月は1人の女の子と出会った。

 彼女は真っ白な着物に淡い水色の帯をし、長い銀髪の持ち主だった。

 彼女は雪女の娘だったのである。

 少女の名は白芽(しらめ)。彼女も一人草原に遊びに来たところだった。
 しばらくの間、花冠を作ったり、寝ころんでお互いの話をしたりと楽しんでいた。
 ところが……それが一転したのは、その草原に黒い影が落ちた時だった。
 白芽がその影を見つけた時、彼女の表情が凍り付いた。
 それに気づき火月が恐る恐る後ろを振り返ると、そこには大きな炎蛇が一匹赤い舌をちろちろとのぞかせてたたずんでいた。
 炎蛇は雪女達にとって、天敵。
 無謀だが白芽を庇い、火月は炎蛇と戦おうとした。
 だが、子供の力など炎蛇にはかなうはずがなく、すぐに火月は倒された。
 そしてそのまま、炎蛇は白芽を連れ去っていったのである。



 + + +



「おい、月。本当にそんな無謀なことをしたのか?」
「酷いゾその疑いのまなざしは。それに、ちゃんと証拠もある」
 火月は左の長袖をめくると腕の肘から上を指した。
 そこには炎のような形の痣があった。
 炎蛇の炎は完治したところで、かならずあとが残る。これが、その証らしい。
「月にい、それ痛くないの?」
「もうな。昔はかなり痛かったゾ」
「んで、その後どうしたんだよ、その雪ん子は。まさかお前」
「助けに行ったさ。ただし、一度雪女達の村に行ってからな」
 ……一応一人じゃなかったのか。その点はえらかったと思う。
 雪女の村って……まさか。
「なぁ、火月。その村って、雪山とか……じゃないよな?」
「ん? 雪山だゾ。まぁ、移動魔法使えないけど、体力は自信あったし。歩いて登った」
 …………体力とかそういう問題じゃねぇっ。
 無謀だ。つーか普通やらねぇって。
 水菜と岐光の顔を交互に見たが、二人ともあきれ顔だった。



 + + +



 雪女達は手伝いはしたものの、助け出したのは火月自身だった。
 それは、火月の希望だったし、雪女達もそれがいいと思ったからである。
 そしてその時、白芽が感謝の印として、身につけていた雫石を火月に渡したのだという。



 + + +



「にしても、よくもらえたな。感謝だとしても雪女の持つ雫石って言ったら」
 話が終わった時、岐光がそう呟いた。水菜もそれを聞いて頷いていた。
 なんか、意味ありげ。後で水菜に聞くか。
「元々白芽は体が弱くてな、でオイラに雫石を渡したなら……って、雪女達の長老がこれに魔法をかけたんだ」
「魔法?」
「ああ。オイラの体力を白芽にコイツを通して送るってな。元々丈夫だったし、ただちょっと眠くなるだけだって言ってたから、引き受けた」
 成る程。それで、いつも寝てるって訳か。
 にしてもよくそこまで……いや、もしかして。
「これで、全部だゾ、オイラの話は。んじゃ、もう眠いから寝る」
 再び障子を背に、火月は眠りについた。
「すごいね。月にいって」
「まさか、こんな話だとはな。オレも正直驚いたぜ。にしても、普通登るか? あの雪山は暖ったかくてもマイナスの気温にしかならねぇのに」
「なぁ。雪女の持つ雫石って、何か意味があるのか?」
 ……一瞬、水菜と岐光が固まった。
 な、何だよ俺変なこと言ったか?
「生まれた時に、一人一つ授けられる物だ。で、一番の思い人に送るんだと」
 …………ふーん。
 火月もまんざらじゃないってことか。
「月にいらしいね。なんか」
「ああ、そうだな。じゃ、オレは散歩でもしてくるか」
 岐光は壁を乗り越えると、どっかに去っていった。

 んで再び、暇な午後が帰ってきたって訳だ。
 だが、後ろで林華が微笑んでいたことに、その時俺は気づかなかった。

 どうやら、俺は自分の事を考える暇は与えられないらしい。


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